1)タイトル:和歌山県におけるパーキンソン病罹患率
英文title:Incidence of Parkinson disease in Wakayama, Japan
著者:森岡 聖次(和歌山県立医科大学公衆衛生学教室;和歌山県新宮保健所古座支所)、坂田 清美、吉田 宗平、中井 易二、志波 充、吉村
典子、橋本 勉
(P403-407)
本文:和歌山県におけるパーキンソン病罹患率を正確に推計するために、1998年に郵送法で調査した。和歌山県内でパーキンソン病が診断される可能性のあるすべての医療機関に、調査票を送付した。調査は1998年2月に、和歌山パーキンソン病懇話会疫学調査部会が実施した。792診療所と87病院が可能性のある医療機関として特定された。これらの施設の医師に1997年1年間に新規に診断されたパーキンソン病の全症例を、厚生省特定疾患神経変性疾患調査研究班診断基準で診断して、登録するように依頼した。879施設中873施設(うち病院は81)から回答があった(応答率99%)。パーキンソン病患者総数は229例で、うち183例がYahr重症度分類でⅠ~Ⅲ度に相当した。人口10万対罹患率は16.9(95%信頼区間:14.5-19.3)であった。男女比は全体で1:1.4で、患者数が最も多かったのは70~79歳であった。パーキンソン病罹患率を和歌山県の北から南に3地域に分けて観察すると、粗罹患率(95%信頼区間)は北から順に、15.9(12.9-18.9)、18.1(12.0-24.2)、19.3(13.4-25.2)であった。1985年モデル人口による年齢調整を行うと、これらの罹患率(95)%信頼区間)は北から、10.8(9.1-12.7)、10.4(8.6-12.2)、9.9(6.9-12.9)となった。
キーワード:パーキンソン病、罹患率、和歌山県、郵送調査法
2)The Jichi Medical School (JMS) Cohort Study: Design, Baseline
Data and Standardized Mortality Ratios.
石川鎮清(自治医科大学地域医療学)、後藤忠雄、名郷直樹、萱場一則、およびJMSコホート研究グループ
(P408-417)
我々は、日本人における心血管疾患および脳血管疾患の危険因子を解明することを目的として1992年にコホート研究(JMSコホート研究)を開始した。1992年4月から1995年7月の間に、老人保健法に基づく健康診断を利用してベースラインデータを収集した。対象者は全体で12,490人の男女で、健診受診対象者に対する参加率は63%であった。平均年齢は男55.2歳、女55.3歳であった。喫煙率は男50.5%、女5.5%で、飲酒率は男75.1%、女25.0%であった。平均追跡期間は7.6年で、その間の対象者の標準化死亡比
(SMR)も計算した。コホート研究対象者のSMRは男0.68 [95%信頼区間(CI): 0.59-0.78]で、女0.73 (95%CI:
0.62-0.85)であったのに対し、それぞれの参加地区全員のSMRは男 1.00 (95%CI: 0.97-1.04)で、女1.06
(95%CI: 1.02-1.10)であった。この論文では、コホート研究の概略を説明し、ベースラインデータの一般的特性を示すとともに、対象者のSMRを計算した。今後、対象者に対する追跡調査を継続し心血管疾患および脳血管疾患のリスクに関する前向きなデータを提供するつもりである。
3)日本における幹線道路からの距離と思春期健康との関連
Relationship between distance from major roads and adolescent health
in Japan
三宅吉博(近畿大学医学部公衆衛生学)、由良晶子、伊木雅之
(P418-423)
中学生において幹線道路からの距離とアレルギー疾患および一般症状の有訴率との関連を評価した。この際、住居から幹線道路までの距離と学校からの距離を分けて評価した。対象は1年生から3年生までの5652名。ISAACで用いられたアレルギー診断基準を使用した。頭痛、腹痛、だるい、咳の症状と自宅から幹線道路までの距離に関する情報を質問票で得た。学校から幹線道路までの距離は地図上で得た。性別、学年、年上の兄弟数、家庭内喫煙、母親のアレルギー既往を補正した。幹線道路から近距離にある自宅は頭痛、腹痛、だるい、咳の高い有訴率と関連した。幹線道路に面した自宅とアレルギー性鼻炎はほぼ有意な正の関連を示した。幹線道路から100メートル以内の居住では喘鳴とアトピー性皮膚炎が多い傾向にあった。学校からの距離はいずれの症状とも関連がなかった。今回の結果は、日本人の思春期において幹線道路に近い居住ではアレルギー、頭痛、腹痛およびだるい症状の高い有訴率と関連がある可能性を示した。交通に関連する要因とこれらの症状との関連を明らかにするために、より正確で詳細な暴露要因および結果因子の測定を用いたさらなる研究が必要である。
キーワード:道路、アレルギー、横断研究、子供
4) 2型糖尿病の発症要因に関するケース・コントロール研究
―身体活動を中心にして―
Case-Control Study of Risk Factors for Development of Type 2 Diabetes:
Emphasis on Physical Activity
王露萍(アベンティス ファーマ株式会社 生物統計・データマネジメント部)、山口拓洋、吉嶺敏子、片桐あかね、白銀和子、大橋靖雄
(P424-430)
本研究の目的は、生活習慣、特に身体活動が2型糖尿病の発症及び2型糖尿病と脂質代謝異常症の共存症の発症に及ぼす影響をケース・コントロール研究デザインで評価することであった。対象(年齢:平均±SD=53.5±6.8、男性:女性=279:119)は、2型糖尿病ケース(n=53)、
脂質代謝異常症ケース(n=130)、共存症ケース(n=58)、及び、コントロール(n=155)の4群とした。自記式調査票を用いて、身体活動とその他の生活習慣に関するデータを集め、検討した。結果:2型糖尿病と共存症における身体活動スコアの最高四分位点において、最低四分点に比べて、オッズ比はそれぞれ0.31(95%CI:0.12-0.81)と0.32(95%:0.13-0.81)。その結果、中高年者における身体活動は2型糖尿病及び共存症の発症に対して予防効果があることが示唆された。糖尿病の家族歴、喫煙は、2型糖尿病及び共存症に対して独立な発症要因であった。
キーワード : ケース・コントロール研究、脂質代謝異常症、身体活動、発症要因、II型糖尿病
5) b日本人移民における中部脂肪と肥満 - 西洋食事パタンの影響
Obesity and Central Adiposity in Japanese Immigrants: Role of the
Western Dietary Pattern
Sandra RG Ferreira (Preventive Medicine Department, the Federal
University of Sao Paulo)、Daniel DG Lerario、Suely GA Gimeno、Adriana
Sanudo、and Laercio J Franco for the Japanese-Brazilian Diabetes
Study Group
(P431-438)
われわれは日系ブラジル人一世および二世人口サンプル (n=530、年齢層 40~79歳)を対象に食餌栄養データ、臨床診査、病理検査をも含む標準質問表をもって栄養因子と体内脂肪の関連を調査した。 食事資料は中部脂肪あるいは肥満の存在により分類した標本グループと比較した。Body mass 指数あるいは腰部円周(従属変数)とエネルギーおよび栄養素摂取量 相関はジェンダー、年齢、身体活動および世代修正マーチ線形回帰で分析を行った。肥満および中部脂肪標本グループはそれでない標本グループに対し比較的高度の量のエネルギーを脂肪分として摂りそして低度の炭水化物を摂取している (p<0.05)。 世代層別処理では二世世代は一世世代よりエネルギー量を脂肪分の形で多く摂っている (p<0.05)。回帰モデルにおいては、蛋白質摂取のみがbody mass指数に有意に関連する変数である。Body mass 指数を腰部円周に代えると男性と蛋白質摂取は中部脂肪に関し独立予報値であることを示した。二世を取り上げた場合、全エネルギー摂取および全多量養素摂取はbody mass指数 (p<0.05)に有意関連を示したが蛋白質摂取のみが腰部円周を予報した。われわれは遺伝的にインスリン抵抗傾向を有する日系ブラジル人は逆況的環境下に置かれた場合幾多の代謝障害を起こすものと推測する。有害な食事パタンによる体重増加に寄与の可能性は特に高蛋白質食餌に係る腹部脂肪蓄積で腰部円周の増大に反映される。腹内脂肪はインスリン抵抗の引き金的役割を果たしているかも知れず、これは日系ブラジル人に見られる糖尿病罹病率、脂肪異常症および高血圧症増加に関連するのではないかと考える。
キーワード 中部脂肪、西洋化、食事パタン、日本人移民、代謝症候群
6) タイトル;大阪府における1980年から1999年までの自殺に対する社会経済要因の影響
英文タイトル;Effects of socioeconomic factors on suicide from 1980 through
1999 in Osaka Prefecture, Japan
筆者;相原宏州(近畿大学医学部公衆衛生学教室)、伊木雅之
(P439-449)
本文;日本における自殺率は1998年に急増した。1980年から97年まで、大阪府における自殺の標準化死亡比(SMR)は全国のそれに比べて通常低かったが、1998年、99年には全国のそれを上回った。筆者は大阪府における1980年から97年の自殺率及び近年増加している自殺率と社会経済要因との関連を調べた。大阪府内の5地域におけるデータを用いて、自殺率及び社会経済要因について時系列分析を行った。若年者および中年男性の自殺率は1980年から97年よりも1980年から99年における解析において求職率及び離婚率とより強く関連していた。生活保護率と自殺率においてもいくつかの関連が見られた。いくつかの地域では自殺率と婚姻率において負の関連が見られた。1980年から99年における中年男性の自殺率と求職率との関連、及び高齢女性と世帯構成人員数との負の関連は特記すべき所見である。
キーワード;自殺、社会経済要因、大阪
7) Influence of Death from Circulatory Diseases on Life Expectancy
at Birth in Japan
渡辺 智之 他
(P450-456)