Journal of Epidemiology vol.14-(5) |
1)Family Caregiver Burden in the Context of the Long-Term Care Insurance System Yumiko Arai (P139~142) 2)パーキンソン病患者の口腔保健状況について Oral Health Conditions in Patients with Parkinson's Disease 中山佳美(北海道岩見沢保健所, 札幌医科大学医学部公衆衛生学)、鷲尾昌一、森満 背景:パーキンソン病患者の口腔保健状況は、あまりよく把握されていない。この研究の目的は、パーキンソン病患者の口腔内状況に影響する関連要因と口腔保健状況を調査することである。方法:我々は、日本の北海道に在住するパーキンソン病患者群104人と歯科健診を受診した一般住民対照群191人について、口腔保健状況を比較した。分析には、The unconditional logistic regressionを用い、性及び年齢の調整を行った。また、このモデルを用い、性別及び年齢別の分析も行った。パーキンソン病患者の口腔保健の知識について、全体と層別にχ2検定とCochran-Mantel-Haenzelの検定をそれぞれ行った。結果:本調査で、次の結果を得た。(1)パーキンソン病患者は、対照群より、咬むことの困難さと義歯の不適について訴える者が多かった。(2)パーキンソン病患者は、対照群より、性に関係なく、歯がある者は少なかった。(3)パーキンソン病患者は、対照群より、性及び年齢に関係なく、毎日、義歯の清掃をする者は少なかった。(4)パーキンソン病患者の大半は、嚥下に問題を抱えている者がみられた。考察:我々は、パーキンソン病患者は、一般住民より、口腔内に訴えを持っている者や口腔保健行動に問題を抱えている者が多いことがわかった。これらの結果は、医療及び福祉サービスにとって、パーキンソン病患者の口腔ケアプランを立てるのに役立つだけではなく、口腔ケアを行う介護職に有益な情報を提供するだろう。 キーワード:Oral Health、 Parkinson Disease、Dental Care、 Deglutition Disorders、 Pneumonia、 Aspiration. (P143~150) 3)日本人双生児の出生時から6歳時までの身体発育曲線 Physical Growth Charts from Birth to Six Years of Age in Japanese Twins 大木秀一(石川県立看護大学健康科学講座)、横山美江 背景:本研究の目的は小児期の双生児の身体発育の特徴を解析し、日本人双生児用の発育参考値を提供することである。方法:対象は正常に発育を遂げた2029組の日本人双生児である。発育データは郵送法ないし手渡しの質問紙票によって収集した。いくつかの年月齢において、体重および身長に影響する因子 をステップワイズ重回帰分析により解析した。生後の年月齢における体重・身長・BMI(body mass index)のパーセンタイル値を男女別に計算し、スプライン関数によって発育曲線を作成した。一般集団の発育基準値と比較した場合の双生児の発育差を算出した。結果:妊娠期間、初経産の別、卵性、出生順位が様々 な程度で身体発育に影響していた。しかし、その影響自体は小さく、大部分は1歳までに消失した。出生時から6歳時までの身体発育パーセンタイル曲線を男女別に提供した。一般集団との発育差は出生時に最大であった。日本の一般集団の50パーセンタイル値と比較して体重では20%以上、身長ではおよそ6% の差であった。この差は生後6ヶ月から1年間で急速に消失した。4歳から6歳の時点では0~2%程度の差であった。結論:少なくとも1歳から3歳までは双生児用の発育曲線が必要であるが、6歳過ぎではこの限りでない。 キーワード:双生児、発育曲線、体重、身長、日本 (P151~160) 4)日本人アマチュアウルトラマラソンランナーの身体特性、ライフスタイルとバイオマーカーの評価 Anthropometric, Lifestyle and Biomarker Assessment of Japanese Non-professional Ultra-marathon Runners 徳留信寛(名古屋市立大学 大学院医学研究科 健康増進・予防医学分野)、栗木清典、山田徳広、市川博充、宮田眞千子、柴田清、星野秀樹、柘植真治、徳留みずほ、後藤千穂、徳留裕子、小林正明、後藤英之、鈴木貞夫、岡本善博、池田正人、佐藤祐造 背景: 日本人アマチュアウルトラマラソンランナーの身体特性、ライフスタイルとバイオマーカー値は十分に評価されていない。対象と方法: 某ウルトラマラソン大会に参加したランナー180名(男性144 名 [50.5±9.4歳 (平均年齢±標準偏差)]、女性36名 [48.9±6.9歳])の身体特性、ライフスタイルとバイオマーカー値と某市人間ドック健診受診者の数値ないし文献上の報告値とを比較した。さらに、研究対象者を月間走行距離別 (-100, 101-200, 201-300, 301+km) に分け、年齢、BMI、喫煙および飲酒の有無で調整して、血液生化学マーカー値に関して分散分析を試みた。結果: 研究対象者は参照群と比較して、男女とも身体活動度が高く、BMIが小さく、骨密度が高く、喫煙率が低く、男性で朝食摂取率が高く、女性では便秘が少なかった。ただし、男女とも飲酒率は高かった。月間走行距離の平均は、男性で257.2±128.9km、女性では209.0±86.2kmであった。男性ランナーの血液マーカー値を月間走行距離別に観察すると、HDLコレステロール値は月間走行距離に比例して上昇し、中性脂肪値は逆に低下し、そのパターンはホッケークラブ(ないし、逆ホッケークラブ)状であった。月間走行距離が300kmを超えるランナーでは、ヘモグロビン量、フェリチン値、白血球数が減少し、クレアチンキナーゼ、乳酸脱水素酵素の値が上昇するなど、過剰トレーニング(オーバーユース)症候群が認められた。結論: 普段、かなり激しいランニングを行なっているアマチュアウルトラマラソンランナーは、望ましいライフスタイルを持ち、血液マーカー値も良好であった。 キーワード: バイオマーカー値、健康指標、生活習慣病、身体活動、アマチュアウルトラマラソンランナー (P161~167) 5)働き盛りの睡眠習慣やその他の生活習慣と後縦靭帯骨化症のリスク:症例対照研究 Sleeping habit and other life styles in the prime of life and risk for ossification of the posterior longitudinal ligament of the spine (OPLL): a case control study in Japan 鷲尾昌一(札幌医科大学医学部公衆衛生学講座)、小橋 元、 岡本和士、 佐々木敏、 横山徹爾、三宅吉博、阪本尚正、 太田薫里、稲葉 裕、田中平三、日本後縦靭帯骨化症(OPLL)疫学研究グループ 背景:後縦靭帯骨化症(OPLL)の発症年齢は50歳前後であるが、その発症は潜在性であり、進行は緩やかである。その発症要因は細かいところまで良くわかっていない。先行研究では高塩食、動物性蛋白の低摂取、耐糖能異常、肥満が、危険因子といわれている。しかし、働き盛り(30歳代、40歳代)の生活習慣と OPLLの関係についてはほとんどわかっていない。 方法:診断3年以内のOPLL患者69名と町の検診参加者の中から無作為に選んだ性・年齢を一致させた住民対照138名を対象に自記式の質問票による調査を行い、睡眠、運動、喫煙、飲酒、二日酔いなどの働き盛りの生活習慣を解析した。 結果:中程度の睡眠(6-8時間 vs 5時間以下または9時間以上、 オッズ比 = 0.18, 95%信頼区間 = 0.06, 0.54)と規則正しい睡眠習慣(定時に起床し就寝する)(OR=0.44, 95%CI=0.22, 0.90) は他の要因を補正してもOPLLのリスクを減少させた。一方、運動、喫煙、飲酒、二日酔いはOPLLのリスクとは明らかな関係は認められなかった。 結論:働き盛りの良い睡眠習慣(睡眠時間6-8時間の規則正しい睡眠)はOPLLのリスクを減少させる キーワード:後縦靭帯骨化症(OPLL)、症例対照研究、リスクファクター、働き盛りの生活習慣、睡眠習慣 (P168~173) |