JEA
Journal of Epidemiology vol.16-(1)

1) Genetic and Environmental Factors Associated with the Development of Hypertension in Pregnancy
Gen Kobashi.
(P1~8)

2) Epidemiologic Pictures of Kawasaki disease in Shanghai from 1998 through 2002
Guo-Ying Huang, et al.
(P9~14)

3) 血清Alanine Aminotransferase値とBody Mass Indexの組み合わせによる死亡と医療費に対する予測能:滋賀県国民健康保険コホート
The Value of Combining Serum Alanine Aminotransferase Levels and Body Mass Index to Predict Mortality and Medical Costs: a 10-year Follow-up Study of National Health Insurance in Shiga, Japan

中村幸志(滋賀医科大学福祉保健医学)、岡村智教、神田秀幸、早川岳人、岡山明、上島弘嗣
【背景】血清Alanine Aminotransferase[ALT]値の総死亡と医療費に対する予測能は、Body Mass Index[BMI]によって修飾される可能性がある。
【方法】40-69歳の国民健康保険加入者4,524名を血清ALT値によって、5つのカテゴリーに分けて(ALT<20、20≦ALT<30、30≦ALT<40、40≦ALT<50、 50≦ALT (IU/L))、約10年間追跡した。各ALTカテゴリーの総死亡のハザード比(ALT<20を基準)と一人あたりの医療費を評価した。
【結果】血清ALT値とBMIの間には、総死亡と医療費に対する有意な交互作用がみられた。BMIが中央値(22.7kg/m^2)未満の対象者では、血清ALTと総死亡および医療費の間に正の段階的な関連がみられた。50≦ALTの総死亡の調整ハザード比は約8であった。しかし、BMIが中央値以上の対象者では、血清ALTと総死亡および医療費の間に有意な差はみられなかった。
【結論】血清ALT高値と中央値未満のBMIの組み合わせは、過剰な死亡や医療費と関連があった。
【キーワード】Alanine Transaminase、Body Mass Index、Mortality、Health Expenditure
(P15~20)

4) 変形性膝関節症日本人女性患者における階段昇降時機能障害と関連する因子
Factors associated with functional limitation in stair climbing in female Japanese patients with knee osteoarthritis

近藤亨子(大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学)、田中隆、廣田良夫、川村秀哉、三浦裕正、杉岡洋一、井上一、黒坂昌弘、山下昭美、白田久美子、岩本幸英
【背景】変形性膝関節症(knee OA)は、関節炎をきたす疾病の中では一般的なものであり、QOLに影響を及ぼす。我々は、Knee OAの日本人女性患者を対象に階段昇降時機能障害に関連する因子を検討した。体重はknee OAのリスクファクターとして知られていることから40歳時体重に注目し、現在の体重、過去の体重、体重変化との関連を検討した。
【方法】対象は、1年間に3つの大学病院でknee OA と初めて診断された40~92歳の日本人女性360人である。階段昇降時機能障害重篤度と関連する因子は、ロジスティック回帰のプロポーショナルオッズモデルを用いてオッズ比(OR)を計算して評価した。
【結果】診断時体重は階段昇降時機能障害重篤度と正の関連を示した。しかしながら、40歳からの体重変化では負の関連を認めた。また、診断時体重と比べると、40歳時体重(第4四分位対第1四分位、OR=2.84、95%信頼区間:1.03-7.83、trend p=0.071)の方がより強い関連要因であった。有意な関連を認めた体重以外の因子は、年齢(70歳以上対40~59 歳、OR=7.37)、診断から12年以上前の痛みや腫れ(OR=2.67)、肉体労働(OR=1.94)、であった。負の関連を示した因子は多産であった(3回以上、OR=0.41)。
【まとめ】本研究では、変形性膝関節症の女性患者における機能障害の進展予防に、40歳頃の体重、肉体労働が有用な因子であることが示唆された。また、出産数が多い者では階段昇降時の機能障害の程度が軽減するという関連を認めた。
【キーワード】変形性関節症、機能障害、階段昇降、体重、出産
(P21~29)

5) 抗ミトコンドリア抗体陰性の原発性胆汁性肝硬変の集計:特定疾患医療受給者証交付申請時の臨床調査個人票データの活用
Antimitochondrial Antibody Negative Primary Biliary Cirrhosis in Japan: Utilization of clinical data when patients applied to receive public financial aid

坂内文男(札幌医科大学医学部公衆衛生学講座)、森満、銭谷幹男、戸田剛太郎
【背景】抗ミトコンドリア抗体(AMA)は原発性胆汁性肝硬変(PBC)の診断に有用であるが、しばしば同抗体が陰性の症例がある。そこで今回我々は本邦におけるAMA陰性PBC症例の集計を行った。
【対象と方法】1999年度に特定疾患医療受給者証の交付を受けた症候性PBC患者数は9,761人であった。この症例の内、臨床データが1999年から2000年までに記載された5,805例を選び、病理組織学的に非化膿性破壊性胆管炎が確認された2,419症例を対象として、AMAの有無に従い、性別、年齢、身体所見、生化学データについて集計解析を行った。
【結果】AMA陰性例は対象症例の19.4%(470例/2,419例)にみられた。また、女性は男性よりもAMA陰性群に多かった。皮膚掻痒のある症例はAMA陰性群で少なかった。生化学データについては、AMA陰性群は陽性群より、低いIgM値を示した。シェーグレン症候群、慢性関節リウマチ、強皮症の合併例はAMA陰性群に多くみられた。
【結論】今回集計されたAMA陰性PBC症例は、低IgM値と各種自己免疫疾患の同時合併がみられ、以前より欧米で報告されているautoimmune cholangitisの病態に類似するものと思われた。
【キーワード】原発性胆汁性肝硬変(PBC)、抗ミトコンドリア抗体(AMA)、断面研究、合併症
(P30~34)

6) 中高年女性を対象とした温泉入浴と生活・運動指導を組み合わせた総合的健康教育:3ヶ月間介入と6ヶ月間介入の無作為化比較試験による1年後比較
Comprehensive Health Education Combining Hot Spa Bathing and Lifestyle Education in Middle-aged and Elderly Women: One-year Follow-up on Randomized Controlled Trial of Three- and Six-month Interventions

上岡洋晴(東京農業大学地域環境科学部)、中村好一、矢崎俊樹、上馬場和夫、武藤芳照、岡田真平、高橋美絵
【背景】本研究は、中高年女性を対象として、温泉入浴と生活・運動指導を組み合わせた総合的健康教育を3ヶ月間と6ヶ月間実施し、1年間の観察期間を踏まえて、その効果を明らかにすることを目的とした。
【方法】中高年女性を無作為に2群に分けて、介入終了後、1年後までフォローアップした。介入プログラムとして、毎週1回、生活・運動指導を1時間と半身浴による温泉入浴(ナトリウム・塩化物泉、41.5度)1時間を、温泉入浴指導員が被検者に指導した。これを3ヶ月間介入群(n=19)と6ヶ月間介入群(n=14)とし、6ヶ月間介入群は、3ヶ月間介入群と同一の内容を2倍実施した。評価項目は、BMI、有酸素性作業能力(自転車エルゴメータによるPWC75%HRmax)、血液性状(総コレステロール、HDLコレステロール、動脈硬化指数、尿酸、ヘモグロビンA1c)、日本語版POMS、自己評価式抑うつ尺度、主観的幸福度、膝・腰の疼痛度、望ましいライフスタイル数であった。
【結果】有酸素性作業能力、ヘモグロビンA1c、腰痛、活気、疲労、抑うつにおいて、両群間に交互作用が認められた(p<0.05)。効果の持続は、3ヶ月介入群よりも、6ヶ月介入群の方が長かった。
【結論】6ヶ月間介入群では、有酸素性作業能力、ヘモグロビンA1c、腰痛、活気、疲労、抑うつの項目で、1年後まで効果の持続が認められた。介入効果は、3ヶ月間よりも6ヶ月間の方が持続した。
【キーワード】温泉、健康教育、運動、中高年、無作為化比較試験
(P35~44)

7) 日本人検診受診喫煙者に対する遺伝子型通知
Genotype announcement to Japanese smokers who attended a health checkup examination

浜島信之(名古屋大学大学院医学系研究科予防医学/医学推計・判断学)、鈴木康司、伊藤宜則、近藤高明
【背景】遺伝子型通知は禁煙を誘導する有効な1方法と思われるが、海外を含め研究はほとんど行われていない。
【方法】対象は2003年に北海道のある自治体が実施した検診に受診した喫煙者である。遺伝子型通知に同意した者に、グルタチオンS転移酵素(GST) M1 present/null、GSTT1、NAD(P)H:キノン酸化還元酵素(NQO1)C609T (Pro187Ser)の遺伝子型を通知した。
【結果】143人(男92人、女51人)の喫煙者のうち、101人がこの研究に参加した。遺伝子型通知後1年の郵送調査により、8人(男6人、女2人)が禁煙したことがわかった。8人のうち2人は遺伝子型を知ったため禁煙したと回答した。遺伝子型検査を受けたことについて後悔している者はなかった。
【結論】最小推定値として得られた禁煙率7.9%(8/101)は高い値ではないものの、回答者の中では有害な影響は観察されなかった。
【キーワード】禁煙、遺伝子型、通知、GSTM1、GSTT1、NQO1
(P45~47)

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