JEA
Journal of Epidemiology vol.16-(6)

1)Social Class Inequalities in Self-rated Health and Their Gender and Age Group Differences in Japan
Kaori Honjo, et al.
(P223~232)

2)hOGG1 Ser326Cys Polymorphism and Risk of Hepatocellular Carcinoma among Japanese
Tatsuhiko Sakamoto, et al.
(P233~239)

3)日本における結腸及び直腸がん罹患率の増加:1959-1997の宮城県罹患率の動向
Increase of Colon and Rectal Cancer Incidence Rates in Japan: Trends in Incidence Rates in Miyagi Prefecture, 1959-1997

南 優子(東北大学医学部保健学科地域保健学分野)、西野善一、坪野吉孝、辻 一郎、久道 茂
近年、日本では、結腸直腸がん罹患率が急激に増加している。その動向を明らかにするために、1959年から1997年の39年間にわたる宮城県罹患データを解析した。年齢-時代-世代モデル(age-period-cohort model)を11年齢階級(30歳から84歳まで5歳間隔)、8時代(5年間隔)、18世代(10年間隔)の罹患データに適用し、結腸がんと直腸がん罹患の時代効果と世代効果を評価した。解析により、女の結腸がんにおける有意な(p=0.04)上向きの時代効果、男の結腸がんにおける有意な(p<0.01)上向きの世代効果が検出された。上向きの時代効果は男の結腸がんでも観察されたが、有意ではなかった。直腸がんでは、男女で有意な世代効果が検出された。この結果を既知の結腸直腸がんリスクファクターと対比すると、これらの時代効果及び世代効果は、肉類や動物性脂肪摂取や肥満といったリスクファクター保有率の変化と関連がある。また、医療技術の進歩やがん検診の普及は、時代効果に影響を与えている。有意な世代効果は、今後も結腸直腸がんが増加するという警告であるが、今後の罹患動向は、時代効果関連要因の影響も受けるだろう。がん罹患及びリスクファクター保有率の継続的なモニタリングが必要である。
【キーワード】モデル統計、世代効果、結腸悪性新生物、罹患、時代効果
(P240~248)

4)日本における地域在住者の栄養補助食品利用状況:「国立長寿医療センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」データより
Dietary supplement use by community-living population in Japan: Data from the National Institute for Longevity Sciences Longitudinal Study of Aging (NILS-LSA)

今井具子(国立長寿医療センター研究所疫学研究部)、中村美詠子、安藤富士子、下方浩史
【背景】日本では栄養補助食品の利用状況や栄養補助食品からの栄養素摂取量に関する研究は少ない。本研究の目的は1)栄養補助食品の利用状況、2)栄養補助食品利用者の特徴、3)栄養補助食品からの栄養素摂取量、4)栄養補助食品からの栄養素摂取量が過剰な利用者の存在を明らかにすることである。
【方法】1年間の栄養補助食品の利用状況と栄養補助食品からの栄養素摂取量を把握するため、自記式の栄養補助食品摂取頻度調査を行った。対象者は40歳から82歳までの2259人である。栄養補助食品は大きく8群に分類した。栄養補助食品からの栄養素摂取量を算出できるデータベースを作成した。日本人食事摂取基準の上限値以上の栄養素を栄養補助食品から摂取している対象者を過剰摂取者とした。
【結果】過去1年間の間に男性の55%と女性の61%が栄養補助食品を利用していた。栄養補助食品の利用者は女性、自己健康観が低いもの、適正体重の維持を心がけているものに多かったが、これらの傾向は栄養補助食品の利用頻度に影響を受けていた。最も多く利用されていた栄養補助食品の種類は男性ではドリンク剤、女性ではビタミン剤であった。いくつかの栄養素では栄養補助食品からの栄養素摂取量が食品からの栄養素摂取量よりも多かった。ビタミンA、B6、K、ナイアシン、鉄、マグネシウムでは過剰摂取者がみられた。
【結論】栄養補助食品の利用状況を明らかにし、栄養補助食品からの栄養素摂取量を算出することは重要である。
【キーワード】栄養補助食品、栄養調査、コホート研究、ミネラル、ビタミン
(P249~260)

5)地域高齢者における身体的機能障害の発生および回復の優れた予測因子としての外出頻度
Frequency of Going Outdoors as a Good Predictor for Incident Disability of Physical Function as well as Disability Recovery in Community-Dwelling Older Adults in Rural Japan

藤田幸司(東京都老人総合研究所 社会参加とヘルスプロモーション研究チーム、秋田大学医学部公衆衛生学教室)、藤原佳典、Paulo H. M. Chaves、本橋豊、新開省二
【背景】高齢者において外出頻度が低下することの臨床疫学的意義はいまだ明らかにされていない。本研究は、地域高齢者において、外出頻度がその後の身体機能障害の発生および障害からの回復を予測する価値があるのかどうかを調べた。
【方法】新潟県与板町に在住する65歳以上の住民1,267人が初回調査に参加し、かつ2年後に再び移動能力、手段的日常生活動作能力(IADL)、基本的日常生活動作能力(BADL)について評価された。初回調査時のふだんの外出頻度によって3群(「毎日1回以上」、「2-3日に1回」、「週に1回もしくはそれ以下」)に区分し、2年後の身体的機能障害の発生および障害からの回復を比較した。多変量解析を用いて潜在的交絡因子を調整して外出頻度の独立した影響を調べた。
【結果】初回調査時に外出頻度が低下していると、2年後の障害発生リスクが高く、かつ障害からの回復の可能性が低下した。潜在的交絡因子を調整しても外出頻度の影響は統計学的に有意であった。「毎日1回以上」群と比べると「週に1回もしくはそれ以下」の群では、移動能力障害およびIADL障害の発生リスク(調整後)はいずれも有意に高く(オッズ比とその95%信頼区間は、それぞれ4.02 [1.77-9.14]、2.65 [1.06-6.58])、移動能力障害からの回復の可能性は極めて低かった(同0.29 [0.08-0.99])。
【結論】地域高齢者においては、ふだんの外出頻度は身体的機能障害の発生および回復に対する優れた予測因子である。保健師や臨床医は、高齢者(患者)のふだんの外出頻度にもっと注意を払うべきである。
【キーワード】外出頻度、身体的機能変化、予測因子、地域高齢者
(P261~270)

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