Journal of Epidemiology vol.18-(2?? |
1)日本人における食事パターンと血圧および血清コレステロールの関連 定金敦子(自治医科大学地域医療学センター公衆衛生学部門)、堤明純、後藤忠雄、石川鎮清、尾島俊之、 苅尾七臣、中村好一、萱場一則 【背景】食事パターンと循環器疾患危険因子の関連は明らかにされていない。本研究は日本人を対象として、因子分析により得られた食事パターンと血圧および血清コレステロールの関連について評価することを目的として行われた。 【方法】6886名(血圧の解析)、または、7641名(脂質の解析)の40-69歳の日本人を対象に横断研究を行った。食事パターンは食品摂取頻度質問票(FFQ)の結果から因子分析により抽出した。交絡因子を調整した上で、食事パターンと血圧および血清コレステロールの関連について検討した。 【結果】因子分析により、野菜、肉食、洋食の3パターンが得られた。男性では肉食パターンの得点は総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロールと関連しており、洋食パターンの得点は総コレステロール、LDLコレステロールと関連していた。女性では野菜パターンの得点は収縮期および拡張期血圧、脈圧と負に関連しており、HDLコレステロールと正に関連していた。肉食パターンの得点は総コレステロール、HDLコレステロールと、洋食パターンの得点は総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロールと関連していた。また、最も洋食パターンの得点が低い群で収縮期および拡張期血圧が上昇していた。 【結論】日本人の集団で確認された食事パターンは循環器疾患危険因子と関連していた。特に女性においてこの傾向が見られた。 キーワード:食事;因子分析、統計;血圧;コレステロール;日本 (P58~67) 2)こもいせコホートデータを用いた健康チェック票THIによる全死因での死亡リスク予測の妥当性評価 浅野弘明(京都府立医科大学医学部看護学科)、竹内一夫、笹澤吉明、大谷哲也、小山洋、鈴木庄亮 【背景】日本で開発された自記式健康調査票の1つである「健康チェック票THI」は、労働者や地域住民の健康評価やストレス対策に利用されてきた。しかし、THIと死亡リスクとの関連性、特に、死亡リスクの将来予測可能性については、報告されてこなかった。 【方法】THIは健康に関する12の一次尺度と5つの二次尺度を有している。1993年に開始された中高年(群馬県内の1市1村に居住)を対象とする「こもいせコホート調査」データを用いて、全死因による死亡リスクとTHI尺度の関連性を検討した。10,816人を93カ月追跡し481例の死亡を観察した。このデータに性別・年齢・地区(市か村か)を調整因子として、Coxの比例ハザードモデルを適用した。 【結果】一次尺度では抑うつ性と攻撃性(積極性)の2つが、二次尺度では心身症、神経症、統合失調症の3つが死亡リスクとの有意な関連性を示した。攻撃性尺度での関連性が最も強く、第1五分位数群(0~19パーセンタイル値)と第3五分位数群(40~59パーセンタイル値)を比較した場合、ハザード比が2.58(95%信頼区間1.88-3.52)になっていた。 また、心身症、神経症、抑うつ性の尺度においても、第3五分位数群での死亡リスクが最も低くなっていた。身体表現性障害を示すT1(二次尺度の1つ)では、死亡リスクとの間に直線的な関連が認められたが、モデルの前提となる比例ハザード性を満たしていなかった。 【結論】こもいせコホートデータを用いて示された、「5つのTHI尺度が死亡リスクに関連する」という知見は、健康評価や健康アドバイスシステムで有効活用することができる。 キーワード:こもいせコホート、死亡、リスク、主観的健康、前向き研究、健康チェック票THI (P68~76) 3)母親の不安抑うつ症状の6ヶ月の追跡調査 佐藤ゆき(国立成育医療センター研究所成育政策科学研究部)、加藤忠明、掛江直子 【背景】母親の心理的苦痛については広く研究されているが、日本において追跡調査をもとにした疫学データはまだ十分ではない。本研究では、育児中の2つの時期における日本人女性の不安抑うつ症状の割合を評価した。 【方法】2004年に出産した女性2,657人に出産した児が3-4か月および9-10か月となった2時点にそれぞれ自記式質問票を配布した。母親の心理的苦痛度を評価するため、質問票には日本語版HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)を含めた。 【結果】不安症状(HADSスコアが8以上)を呈したのは3-4か月時点で26.2 %、9-10か月時点で26.1 %であった。3-4か月時点で不安症状がなかった女性のうち、11.6 %が9-10か月時点で不安症状を呈していた。抑うつ症状(HADSスコアが8以上)を呈したのは3-4か月時点で19.0 %、9-10か月時点で24.0 %であった。3-4か月時点で抑うつ症状がなかった女性のうち、14.0 %が9-10か月時点で抑うつ症状を呈していた。 【結論】3-4か月時点から9-10か月時点まで母親の不安状態は続いており、抑うつ症状は9-10か月時点でさらに高まる傾向があった。それでも、抑うつ症状より不安症状を呈する割合が高かった。 キーワード: 母親の福利厚生、不安、抑うつ、アジア大陸系集団 (P84~87) |