Journal of Epidemiology vol.18-(5) |
1)生きがいが循環器疾患死亡リスクに及ぼす影響について 小泉 恵(秋田大学医学部第2内科学講座循環器内科学分野、秋田大学医学部社会環境医学講座健康増進医学分野)、伊藤 宏、金子義博、本橋 豊 【背景】多くの研究は病気の原因に焦点を当てているが、健康増進因子を扱った研究は少ない。そこで、我々は、生きがいが循環器疾患死亡に及ぼす影響について調べた。 【方法】我々は1988年に前向きコホート研究を開始し、40-74歳の日本人2,959人について、2003年まで追跡した。生きがいのレベルについては、自記式質問票を用いて測定した。心疾患、脳卒中、悪性腫瘍の既往者を除く、質問票回答者1,618人(男性832人、女性786人)について、コックス比例ハザードモデルを用いて分析を行った。 【結果】平均追跡期間は13.3年であった。全死亡数は249人(男性172人、女性77人)、心疾患死亡数は32人、循環器疾患死亡数(心疾患死亡数および脳卒中死亡数)は63人、悪性腫瘍による死亡数は104人であった。生きがいのレベルが低い男性に対する、生きがいのレベルが高い男性の調整ハザード比(95%信頼区間)は、脳卒中死亡で0.28(0.10-0.84)、循環器疾患死亡で0.56(0.28-1.10)、全死亡で0.62(0.45-0.86)だった。女性では、生きがいと死亡の間に統計学的有意な関係は認められなかったが、これには、死亡数が非常に少なかったことが統計学的有意性を減じた可能性が考えられた。 【結論】男性において、生きがいが全死亡、脳卒中死亡、循環器疾患死亡リスクに影響することが示された。 キーワード:生きがい、循環器疾患、死亡 P191~196 |